AKB48全国ツアー2019~楽しいばかりがAKB!~ 感想
7月7日から始まったAKB48 4年ぶりの単独ツアーがこの程一旦千秋楽を迎えたので、感想を書き残しておく
◆タイトルに込められた意味
AKB48全国ツアー2019~楽しいばかりがAKB!~
「楽しいばかり」
それはAKB48にとって4年ぶりのツアー開催にあたって大切なことだった
[公演詳細]
<日程> 2019年10月22日(火・祝)
<会場> 苫小牧市民会館
昼公演[開場]11:30 [開演]12:30
夜公演[開場]16:30 [開演]17:30
[出演メンバー]
岩立沙穂、岡田奈々、岡部麟、小栗有以、柏木由紀、久保怜音、倉野尾成美、込山榛香、坂口渚沙、西川怜、福岡聖菜、向井地美音、武藤十夢、村山彩希、山内瑞葵、横山由依
ツアーといえば
2014年に行ったチームツアー(チーム4を観に大分と愛媛に飛んだ)や
2015年に行ったヤングツアー(日帰りで岡山に行った)
ぶりの開催である。
チーム8一期生は2014年加入、15期生ですら2013年加入であり
多くのツアー選抜メンバーにとって、自分たちがAKB48の中心となって作り上げるツアーは初めてと言っていい
新総監督は峯岸チーム4時代を回顧するたび、断続的にコンサートが待つツアー期間がメンバーにとってかけがえのない時間になることを語っていた
ツアーに飢えていた間に、ツアーに求めるものは単純明快なその一点に集約されていた。
ツアーコンセプトとして、スキルを見せつけたり、演出を凝ったり、重大な意味を込めたりする必要は無かった
ただただ楽しいツアーを——ツアーというAKB48のコンサートの機会を——メンバーもファンも必要としていた
そしてそれは達成されたのではないだろうか。
◆楽しいばかりのセットリスト
とにかく今回のツアーのセットリストは100点満点の出来だった
個人的には後にも先にも類を見ない「史上最強セトリ」だと結論付けている。
もちろん「僕の考えた最高のセトリ」みたいな理想はもっと別にあるにせよそんなものは現実的に考えにくく
実際行われるコンサートのセトリとして非常に理想に近いセトリだったのだ
[セットリスト]
M00.overture
M01.真夏のSounds good !
M02.Everyday、カチューシャ
M03.君だけにchu!chu!chu!
M04.そばかすのキス
M05.ただいま恋愛中
M06.彼女になれますか?
M07.2人乗りの自転車
M08.RUN RUN RUN
MC【初日のユニット】
M09.Choose me!(小栗有以・岩立沙穂・込山榛香・福岡聖菜・西川怜)
M10.To goで(久保怜音・向井地美音・岡部麟)
M11.誰のことを一番愛してる?(山内瑞葵・村山彩希・佐々木優佳里・倉野尾成美・武藤十夢)
M12.Relax!(坂口渚沙・岡田奈々・柏木由紀)
M13.鏡の中のジャンヌ・ダルク(向井地美音・込山榛香・岩立沙穂・村山彩希)
M14.僕の打ち上げ花火【千秋楽のユニット】
M09.ペディキュアday(向井地美音・込山榛香・小栗有以)
M10.Stargazer -2012 Here I am cuz of U-Yuka Masuda from DiVA(村山彩希)
M11.この世界が雪の中に埋もれる前に(横山由依・倉野尾成美・福岡聖菜・久保怜音)
M12.カッコ悪い I love you!(柏木由紀・西川怜・坂口渚沙)
M13.TWO ROSES(武藤十夢・岩立沙穂)
M14.クサイモノだらけ(岡田奈々・岡部麟・山内瑞葵)MC 西川怜vs久保怜音トランプカッター対決(きゅうり)/フリートーク(柏木由紀・横山由依・向井地美音)
M15.次のSeason(撮影タイム)*1
M16.鈴懸の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの(撮影タイム)
M17.Teacher Teacher
M18.NO WAY MAN
M19.僕たちは戦わない
MC 企画コーナー
M20.言い訳Maybe
M21.希望的リフレイン
M22.大声ダイヤモンド
M23.サステナブル*2
アンコール
EN01.AKB参上! *3
EN02.恋人いない選手権
EN03.法定速度と優越感
MC
EN04.君と虹と太陽と
ダブルアンコール*4
WEN01.Mosh & Dive
WEN02.夏が行っちゃった
MC
WEN03.永遠より続くように
その素晴らしさは、とにかくストレートど真ん中の素直なセトリであること。
劇場公演では自己紹介MCまでの冒頭は4曲が多い。その影響かこれまでの48グループではだいたい4曲くらいの枠で取られていたが、そんな既成概念をぶっ壊してくれた8曲連続の冒頭である。単純に盛り上がれる
M5~M8はA→K→B→4という分かりやすい編成であり、その選曲がまた素敵だ
どう素敵かを言葉にするのは難しいが、それぞれのチームらしさが出る曲を素直に持って来ているから良い
(正直「そばかすのキス」と「2人乗りの自転車」を同じコンサートで見られる日が来るなんて…嬉々!)
この冒頭を見せられて好きにならないAKB48好きはいないと思う。
選曲の効果として、シングル曲は表題曲としての振り付けや歌割りがされているので前方に向かう圧力が強い
しかし劇場公演曲は全く異なる意図で作られている
例えば「2人乗りの自転車」で二人ずつペアになってじゃれ合ってみたり、「RUN RUN RUN」で横一列になって順番に走るモーションを繋げてみたり——最後はさっほーがゴールする——
そうしたカメラワークではなく客席が想定され、楽しませる魅力を持つ曲たちが前述の感想を引き出すのに大きく貢献している。
ユニットパートはいつの時代も、そのコンサートにおける個性を表現できるシーンである
ここでも奇をてらった印象は無い
知名度の差こそあれ、個性ある曲が全体を壊すことなく適度に散らばっている
西川怜さんセンターの「Choose me!」や、
坂口渚沙さんセンターの「Relax!」はスマッシュヒットであったし
山内瑞葵さんセンターの「誰のことを一番愛してる?」は鳥肌が立つほど完璧な人選で見応えしかなかった
アイドルソング然としているチームB曲「To goで」を、3人ユニットとして可愛らしさ全開でぶつけたのは辣腕ぶりを表しているし
村山彩希さんが「Stargazer」を歌いきる姿はツアーに期待される特別感や挑戦に満点で回答している
坂道AKB、ノースリーブス、フレンチ・キス、DiVA、NMB48、SKE48のテリトリーから少しずつ楽曲を拝借しているのも特徴と言える
曲調、曲の出自、メンバーとの相性、、、
緻密に設計されたバランス感覚で組まれたセトリは安心感を覚える
適度な遊び心がユニットパートを面白くするが、逆に言えばツアーを重ねれば重ねるほど遊び方に変化を生まなければならないのもまた世の常
そういう意味で新鮮かつ捻りすぎていないこのセトリはこのツアーだからこそ生まれ得たのだと思っている。
大阪でNMBの曲、広島でSTUの曲を使って行われるなどした撮影タイムの選曲も文句なし
ともすればつまらなかったり、もったいなかったりする選曲の難所といえるパートだが
姉妹グループのつながり、それぞれの地元に来ている特別感、SNSで拡散された際の効果なども考えられる
各グループが持つ楽曲群の中から撮影タイムを盛り上げる楽しい曲を選べるからハズレは無いし、多くの曲を楽しむことができた
ダンスパートは3曲をノンストップで披露する
メンバーが息を切らせて踊るこうしたパートはメリハリが出るし、やはりそこで輝くメンバーがいるから重要である
Teacher Teacherで水を得た魚のように魅力が解放される岡部麟さん
一心不乱な岡田奈々さんや、カッコよさが卓抜する倉野尾成美さん
上腕をしなやかに使う山内瑞葵さん、表情に圧倒される込山榛香さん
少し大変そうな柏木由紀さんに、逆に重力を感じさせない坂口渚沙さんなど
見ていて飽きなかった。
盛り上がるシングルメドレーパートはフルだった。天才的だ
元オタクの彼女が持ち合わせる歌詞に重きを置く原理主義的思想が導いた必然の発想で、2番も聞いてもらわないと意味が無いという哲学が根底にある
曰く「希望的リフレインはただの好きすぎてウォウウォウの曲ではない」である、テストに出ます。
しかし本当にやりきってしまったのはある種の革命だ
楽しすぎる
また、これまでたくさん披露されてきたお決まりの楽曲で安く盛り上がるのではなく、“今ここ”を大事にして質と意義を伴わせる選曲も胸を打った
アンコールのビートカニバル楽曲「恋人いない選手権」は、定番曲への仲間入りを果たそうとしているし
千秋楽のWアンコールの選曲は歌詞の意味が重視され、伝えようとしていることが誰の目にも明らかに伝えられようとしていた
このタイミングで「夏が行っちゃった」が観れたのは僥倖だった
◆演出・運営 雑感
こうしたセットリストに支えられながら完遂されたツアーであるが
セトリ以外の面も振り返っておきたい
[日程]
7月7日(日):大阪・NHK大阪ホール(ツアー選抜)
7月20日(土):宮城・仙台サンプラザホール(ツアー選抜)
8月3日(土):広島・上野学園ホール(ツアー選抜)
8月17日(土):埼玉・ウェスタ川越(昼:チームA/夜:チームK)
8月20日(火):神奈川・カルッツかわさき(昼:チームB/夜:チーム4)
8月31日(土):福岡サンパレスホテル&ホール(ツアー選抜)
9月4日(水):愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール(ツアー選抜)
9月12日(木):東京・江戸川区総合文化センター(昼:チームK/夜:チームA)
9月26日(水):千葉・森のホール21(ツアー選抜)※追加公演
9月27日(金):千葉・森のホール21(昼:チーム4/夜:チームB)
10月22日(火):北海道・苫小牧市民会館(ツアー選抜)
12月9日(月):東京・TOKYO DOME CITY HALL(追加公演、チーム4)
12月10日(火):東京・TOKYO DOME CITY HALL(追加公演、朝:チームB/昼:チームK/夜:チームA)
影アナが影アナではなかった演出はツアーを通して行われた
開演前、一人のメンバーが登場してスマホ画面に見立てた舞台装置の電光掲示板と会話をする
会話の相手は最終的に影アナを行うが、台本を持ったまま舞台に出てきてネタバラシをするという寸劇
最初に見たときはそれなりに驚いた
公演を重ねるにつれ新鮮なリアクションは薄れていったにせよ影アナを舞台上で行うのは稀な演出だった
舞台装置の少なさは気がかりになるほどだった
可動式の電光掲示板が5つ、うち3つはその上に乗って踊ったりできた
別に大きな不満があるわけではないのだが、スクリーンモニタがないと遠い席の人はずっと米粒になるのでホールレベルではちょっと厳しい(他人事)
お金掛けられないのかなあとか心配しつつ、シンプルだからこそ最高のセトリの邪魔にならなかったことは良かったと思う(皮肉スレスレ)
その5つの電光掲示板の使い方はかなり良かったと思う
曲に合わせてイメージを投影したり、歌詞を浮かび上がらせたり
何よりメンバーのリップシンクが豊富だったのは大変素晴らしい取り組みだと思う
撮り下ろしが見られるのは現場の特権だし、しかもめっちゃくちゃ盛れていた
唯一と言っていい演出が「君と虹と太陽と」で赤い幕が下りてきてメンバーがそれを左右に持っていくアレだ
せっかくの神曲の落ちサビがその作業に追われて踊りどころではないのは非常にもったいなかった
あと、何故Dメロは踊らせなかったのだろうか、楽しみにしていたのに。大きな心残りである
MCの一つは企画コーナーがあてがわれた
ファンへのアンケートを基にしたメンバーの印象当てや、ファン参加型のジェスチャーゲームなど
シンプルで素朴に楽しめるコーナーになっていたように思う
また、一つは柏木由紀さん、向井地美音さん、横山由依さんによるフリートークMCになった
ツアーの序盤はメンバーから集めたコメントを紹介するようなテーマがあったが最後にはフリートークになっていた
ちゃんと喋れる人が自然に喋っているMCも心地よい時間だった
全会場満員御礼とはならなかった
広島はほかより若干小さ目だったが後ろの方は空席がちらほら見られたし
48グループが同時多発的にコンサートなどを行っていた福岡公演は当日券が販売された
大阪と仙台は肌感覚では定員くらいに見えた
北海道は遠かったが千秋楽だったので完売しただろうか
関東で行われた公演はさすがに落選祭りだった
“ワンチャン玉入れ”に加えて“ワンチャングライダー”なる企画が誕生?した今ツアー
目玉はコンサートの最前列で見られるチケットの購入権である
いずれも少々やってみたが、コツを掴むまではなかなか厳しく
結局銀賞?のメッセージカードが精一杯だった
しかし極めたファンは特賞をとるまで繰り返しチャレンジして複数の公演で最前観覧を叶えていた
お金と時間と労力をかけて獲得しているのでそういったファンには全く不満はない、そういうシステムなのだから
ただコンサートの最前がいつメンのものになっているのはあまり喜ばしくないのではないかと思う
例えば最前じゃなくて2列目にするとかチケセンと紐付けているなら一人一回までにするとか
ここ最近(48グループで取り組む博多座の売れ行きが悪いらしく)運営さんもなりふり構わなくなってきているが、あまりあこぎにやり過ぎて辟易とさせないでもらいたい。
◆この経験をぜひ来年に
千秋楽公演も終演を迎えようとしている終盤のMCでは向井地美音さんや横山由依さんが思いを述べた。
横山由依コメント(ステージ上、一部抜粋)
自分が総監督のときにツアーができなかったことがすごく悔しかったんですけど…各地でファンの方がツアーに来てね!って何度も言ってくださっていて、でもそれを叶えられなかったことが自分としてはすごく力不足だなと感じていたけど、でもそれを言い続けて、みーおん(向井地)が引き継いでくれて、メンバーもいっぱいいっぱいツアーに行きたいって言ってくれたのが、こうやって叶ったと思うので、本当に本当に嬉しいですし、ファンのみなさんの顔を見ていると、きっとみなさんも普段、学校や仕事で色々なことがあって、それもこの瞬間だけでも忘れてくれたら嬉しいなと思いますし、メンバーもそうですけど、たくさんのファンの方がいて、スタッフさんがいて、このAKB48が成り立っているんだな、っていうのをこのツアーを通して改めて感じたので、これからもいろんなことをAKBでやっていくと思うんですけど、みなさんに楽しいとか、嬉しいとか、ちょっとでも変だなってとこもあるかもしれないけど、変化を恐れず、たくさん挑戦して、もがいて、もっともっとたくさんの方に愛していただけるグループになって、もっと地方だったり大きなステージに立てるように頑張りたいなと思いますので、これからも総監督をはじめ、メンバーみんなのことを応援よろしくお願いします。向井地美音コメント(ステージ上、一部抜粋)
今年の夏は総選挙がなくて、AKB48グループをどう盛り上げていけばいいんだろう?と私もメンバーも、ファンの方も何が起こるんだろうと不安な方もたくさんいらっしゃったと思うんですけど、全国ツアーを通して、今年の夏はひとりひとりが競い合うんじゃなくて、みんなで1つになれるこういうライブが出来たことが、本当に良かったなと思いますし、だからこそ、今まで先輩方が作ってきてくださったAKB48を引き継ぎながら、私たち世代でまた新しいAKB48を作っていって、それが根本に<楽しいばかりがAKB!>という言葉を忘れずに、またAKB48らしいAKB48を作っていけたらいいなと思います。このツアーをやっている時間は私個人としても、ああ私の大好きなAKB48だなって思えたから(涙ぐみ、会場から盛大な拍手)、大事なこのAKBを守り続けていけるようにこれからも頑張りたいと思います。これからも応援よろしくお願いします。
AKB48にとって4年ぶりのツアーが終わった(12月に各チーム公演は予定されているが)
良かったところはたくさんあるし、まだまだ改善できる部分もある
一度できたから満足ではない
ツアーは重ねていけば深みが出るし、メンバーもファンも成長していくものだ
AKB48のメンバーは16人ではない、機会はまだまだ足りない
是非とも近い将来どんな形であれ“楽しいツアー”がまた行われることを願ってやまない
ともあれ今は4年ぶりに我々が待ち望んだツアーが完遂されたことを喜びたい
このツアーは自分の2019年の夏を間違いなく鮮鋭に彩ってくれた
感謝しかない——
ありがとう——
そういえばどこの会場でも毎回思ったが、みんな足が長い
素晴らしい衣装の貢献もあるが小栗有以さん、山内瑞葵さん、西川怜さんを筆頭に背が高くて美脚なメンバーが多いことに気付かされた
や、、「いいよね」っていう。。