AKB48が示すコロナ禍の羅針盤 なぁおんソーシャルディスタンス公演 感想

2020年6月13日(土) 19:00開演

『なぁおん ソーシャルディスタンス公演』@AKB48劇場

出演:岡田奈々向井地美音

配信:AKB48 LIVE!! ON DEMAND / VR SQUARE

 

 


なぁおんソーシャルディスタンス公演

 

 

◆経緯

新型コロナウイルス感染拡大防止のためお客を入れて行う通常の劇場公演を中止することが2月26日にアナウンスされ、未だに元通りの公演に戻るメドは立たず。

3月12~21日に配信限定公演を劇場で開催。DMM・YouTube・LINELIVEなどで配信。

3月26・27・31日に配信限定で企画モノの特別公演を劇場にて実施。

4月7日、7都府県で緊急事態宣言が発令。

4月16日からは断続的に「おうち公演」を開催。メンバーは各自宅から参加しSHOWROOMにて配信。(6月4日までの1ヶ月半で17公演開催)

5月25日、緊急事態宣言が解除。

6月11日に『ソーシャルディスタンス公演』の開催をアナウンス、6月2週3週の土日計4日間、それぞれ2名ずつが出演、1時間の内容。この時点でこの名称は使われていなかったが当日のツイッターおよび公演中のMCで使用された。

 

 

◆セットリスト

『なぁおん ソーシャルディスタンス公演』

overture
01. 遠距離ポスター/岡田、向井地
02. Pioneer/向井地
03. 片思いの対角線
04. 君は僕の風
05. だらしない愛し方/岡田
06. I’m crying
07. 誰が私を泣かせた?
08. この涙を君に捧ぐ
09. イイカゲンのススメ/向井地
10. ジャーバージャ/岡田、向井地
11. ヘビーローテーション
12. 翼はいらない

f:id:free_supp:20200613235507j:plain

f:id:free_supp:20200613235524j:plain

f:id:free_supp:20200613235538j:plain

 

◆感想

コロナ禍が直撃する劇場公演というジャンルにおいてAKB48がまず行ったのは1時間の2人公演だった。

無観客は継続として、出演メンバーを2人に制限。通常の2時間の半分の1時間で行い、またステージ上でも距離を取ってパフォーマンスをした。これにより練習・準備・公演における接触機会は16人などの大人数での開催と比較してかなり削減される。

今後も新しい生活様式が求められる中で、リスクヘッジをしながら需要にどう答えていくかという興行側に突きつけられた課題へ試行錯誤が続くと思うので注目していきたい。

 

セットリストに目を向ける。

MCによると今回は全体的に二人で全部決め、ソロパートは相談せずにそれぞれで考えたとのこと。

明日のゆいゆいずっきー公演を見てみないと分からないが、例えばM1の「遠距離ポスター」とM8の「この涙を君に捧ぐ」などは『ソーシャルディスタンス公演』共通の曲になっていても違和感はないくらいテーマによくマッチしていた。

 

お互いにソロで4曲ずつ披露

みーおんは「Pioneer」「片思いの対角線」「君は僕の風」「イイカゲンのススメ

なぁちゃんは「だらしない愛し方」「I’m crying.」「誰が私を泣かせた?」「この涙を君に捧ぐ」だった。

 

 

おんはチームAの曲、バックダンサーデビュー曲、センター曲など自分自身とのつながりを強調してさらっと説明したが歌詞を知っていればそれ以上に"ソーシャルディスタンス"との結びつきに気付く。

かつて無名の存在だったAKB48を大きな存在にした初期メンバーを歌う「Pioneer」はこの状況そのものを歌っている。これまでの活動が全くできなくなってしまった今のコロナ禍において自分たちが"先駆者"となって大所帯を存続させる道を切り開いていかねばならない。

片思いの対角線」も読んで字の如く、元は対角線に座っている片思いを切なく歌う曲だが昨今は最短距離でも対角線が求められる時期である。今まさにという一曲であろう。

「君は僕の風」は「どこにいてもわかるんだ その存在を感じてる」という歌い出しが象徴するように、実際に近くで会えなくてもという前提に立った曲である。そう考えるとAKB48には片思いを表現する曲にこうした距離を感じさせる言い回しは少なくないのでまだまだ掘り出せそうである。

イイカゲンのススメ」も息抜きをしようというメッセージソング、家の中にひきこもりがちな情勢ではこれも大切な考え方だ。

 

なぁちゃんはみーおんに関係する曲を選んでみたと言っていた。

「だらしない愛し方」「誰が私を泣かせた?」はどちらも直接的に関係しているが、「I’m crying.」はチームAでしかないのでまあなぁちゃんらしい表現にふさわしい曲調で統一した感じが強い。特にこういうアンニュイというかダークでシリアスな曲がよく似合って迫力が伝わるので適材適所だと思う。

「この涙を君に捧ぐ」に関しては涙つながりの印象が強い。またこの曲のメッセージ性の強さから医療従事者をはじめとするソーシャルワーカーへ贈る曲にも思えた。地上の君が輝くのなら空から見守る自分の涙を雨としよう——家に閉じこもることが間接的に最大限の支援になるというパラドックスがはまっている。

 

終盤はお互いを象徴するシングル曲で締めた。

ヘビーローテーション」の背中合わせのシーンですら距離に隔たりがあったのはとても象徴的だった。

「翼はいらない」のベンチが久しぶりに見られたのは特別感をより感じたところである。

 

全12曲、コンパクトだが物足りなさは不思議と感じなかった。

多くの制限を受けながらも再開した劇場公演だけに一つ一つから多くを感じ取ろうとした気がする。

 

 

 

明日、そして来週に続く残り3公演への興味が俄然湧いてきたのだが

各公演のオリジナリティーが全開でも悪くはないが、せっかく『ソーシャルディスタンス公演』と銘打つからには何かしらの共通項、柱となるようなものがあってもいいなと思っているので

そんなところを探しながら見ようかどうしようかと思っている。